彼女が虹を見たがる理由

おかしくておかしくてたまらない。

自分の邪魔になる者はすべて殺してしまえ。

心の中でそう叫ぶ。

「本当にそれでいいの?」

不意にそう聞かれ、俺は笑い声を止めた。

その声間違いなく村田のものだったが、俺の右側から聞こえて来たのだ。

ゆっくりと右へ顔を向けると、小柄な村田が首を傾げて俺を見ていた。

途端に手に伝わって来る相手の体温が急激に下がって行く。

俺は目の前の人間へと視線を戻した。

そこに立っていたのは、村田よりも背が高いショートカットの女だった。

そして……その服は血まみれだったのだ。

咄嗟に手を離そうとする。

しかし、離れない。

「なんだよ、これ……」

自分の声が情けないほどに震えている。

「平野雄和が殺した、栗田さん」

村田が抑揚のない声で返事をする。

その瞬間、あの夜ひき殺した女の顔が鮮明に思い出された。

被害者はショートカットだった……。

「これで栗田さんが成仏してくれれば、あたしは虹を作らなくて済む。不思議ちゃんというレッテルからも解放される」

村田はそう言い俺に背を向ける 。

「おい、待ってくれ! 冗談じゃないぞ!!」

悲鳴に近い声を張り上げる。

「そう。これは元々冗談なんかじゃない」

村田は一旦振り向いてそう言った。

そして、再び背を向ける。