「ハァッ、ハァッ……」

ガラガラッ バタンッ

私は席に着くと、時計を見上げた。針は8時30分少し前を指している。

「ま、間に合ったぁ〜〜!」

すると私のすぐ前の席の子が振り返る。

「どうしたのよ柚希〜。入学早々、遅刻ぎりぎりとか。なんかあった?」

ニヤニヤしながらそう嫌味っぽく話しかけてくるのは、昨日入学式のあとすぐに仲良くなった坂本 麗奈ちゃん。見た目はちょっとハデだけどすっごく優しくて、気の合う友達!友達ができるか不安だったけど、こんないい子と仲良くなれて嬉しいなっ

「もぉ〜、いじわるな事言わないでよぉ」

少し怒ったふりをして頬を膨らませると、

「あははっ。ごめんごめんて// 柚希からかうの面白くってさぁ〜」

「もうっ!」

いっそう頬を膨らませると

「だからごめんて、柚希様〜。ほらっ、柚季の好きなお菓子あげるからっ」

そうは言うものの、まったく悪びれる様子のない麗奈ちゃんに「知〜らないっ」とわざと子どもっぽく返すと、自分でもおかしくなり、思わず吹き出してしまう。すると、麗奈ちゃんもおかしかったようで、

「ぷっ… 、あはは〜っ」

2人して笑い出す。

そのとき私は、ふと思い出していた。さっきぶつかった人は誰だったんだろう…?

そう思ったとき。

ーー キーンコーンカーンコーン ーー

チャイムが鳴って、先生が入ってくる。

「はい、席着けー」

その声で教室のみんなが、ガタガタと動き始める。

「今日は、高校入ってすぐのお前達が今どの程度できるのか確かめるために、抜き打ちテストやるぞー。HR終わったらすぐ準備しろー」

途端、一斉に

「えぇーー!?」

そんな叫び声に包まれる。

四月。穏やかな高校生活の始まりだった。