異聞三國志

まずは士郎たち、東行きの動向から述べていこう。


士郎は道すがら虞平から問われた。

「士郎殿は、一体呉にてなぜ、天草とエビ、カニを所望なのか。」

「カニ、エビの甲羅は我々が“キチン質”と呼ぶ物質で出来ております。放線菌はそれを好むのです。」


「菌とは。」


「労咳は結核菌という小さな生き物が起こすもの、言わばそれを『夷をもって夷を制す』のが同じように小さな生き物である放線菌がやっつけてくれるのです。しかも放線菌は人体には無害なのです。」


現在でも結核の特効薬の一つであるストレプトマイシンは放線菌の一種である。


「して、天草は。」


「天草は寒天にして、培養の生地にするのです。」


「寒天?」


「天草を乾かして後煮るとできるものです。これがあれば、菌を育てることができる。」

「なるほど。じゃあそれがあれば、夷をもって、夷を制することができるのですな。」


「わかりませぬが可能性はあります。ただ・・・。」

士郎にはまだ気がかりがあった。