電話の向こうに耳を澄ませると、聞き覚えのある泣き声が響いていた。
「もしもし?」
電話の向こうでは結の泣き声を後ろに、苦しそうな呼吸も聞こえている。
看護師の対応だけにならなかった理由がなんとなくわかった気がする。
…看護師もきっと予想はついていたのだろうけど。
電話の向こうで何度か俺の名前を呼ぶ陽は、時々荒い呼吸を抑えながら息を続けた。
「何かあった?」
そう聞けば“気分が悪い”と弱々しい声が届く。
「薬…欲しい」
珍しく陽の口から薬の要求。
相当辛いらしい。
「棚から薬取れる?俺もあと30分で帰るから。それまで頑張って」
…とは言うものの、正直あのまま放置するのは怖い。
だから陽と結を預けておきたかったのに…。