時刻は20時を回ったが…まだ帰れそうにはなかった。


時計を確認してため息を漏らしつつ、診察室のデスクには未確認の資料がある。



早く帰れるだなんて無責任に言うもんじゃないな…

と思ってからでは遅いんだけど。




伸びをして時計を見つめていたら、奥から看護師が顔を覗かせた。



追加の資料か?


とでも思いつつ眺めていると、手には受話器が握られている。



「先生にお電話です…今大丈夫ですか?」



デスクの上を覗いて首を傾げる看護師に頷くと、受話器が渡される。



「…患者さん?」



「あ…いえ、確認取れなくて。とりあえず上野先生に繋いでほしいと」