数分して車のドアが開くと、蒼の腕に抱えられた夏来がぽろぽろと涙をこぼしていた。




「夏来?」



思わず声を上げてしまう。



後ろの席に大人しく座った夏来は、洋服の袖で涙を拭った。



蒼が車のエンジンをつけると、



「夏来、少し熱っぽいのかも」


と苦笑いをした。



「…え?」




「でも勘違いかもしれない。ほんのり温かかった」



「…それで朝愚図ってたのかな?」



「そうかも」



家へと車を走らせる途中、夏来のすすり泣きだけが車内に響く。



「…夏来、気持ち悪い?」



「悪くない…」



蒼が聞いても悪くないと答える夏来は、咳き込みを繰り返した。



「…母さんに聞いたけど昼間からずっと咳き込んでるって。風邪かな」