何度も体勢を変えながらソファに蹲っていたら、厚手の毛布で体が包まれた。
お礼を言う余裕はなかったが、隣に座った気配は感じ取った。
「夕飯作るから寝てな」
「大丈夫…出掛ける…」
手のひらが背中を行き来した。
擦ってもらえるだけで辛さが少しマシになる。
日頃から子どもと触れ合っている奏太の手、優しくて大好きなんだよね…
「ふっ…どこが大丈夫なんだか」
求めた通りに腰を押してもらい、怠さの中に心地よさを感じる。
雲がかかっていたような気分が、少しずつ晴れてくる。
「ごめん…こんなつもりじゃなかった」
仕事休みの奏太まで巻き込んで、こんなんだから隣にいてくれて。
放置されても仕方ないのに、離れないでいてくれて。
「昔さ、出先で倒れたことあったよな」
少し顔を上げたら、奏太は苦笑していた。
「我慢して会いに来て、結局立てなくなってさ」
「…思い出した」
「理由も話さなかった」
「言えないよ…、付き合い長くなかったし」
「そう?」
「会ってからやっぱり調子悪いって、面倒だろうなって思ったし」
当時のことを思い出し、そのときの痛みや寒さや場所の情景がはっきりと浮かんでくる。
結局我慢できなくなって、道端に座り込んで、奏太には理由も言えなくて。
痛みで震える私に自分の上着を掛け、今と同じように背中を擦ってくれた。
冷たいベンチが懐かしい。
あのときは痛みを申告するのも気が引けたのだ。
そんなときもあったんだ、私たちにも。
「結局どうしたんだっけ…」
「近くのホテル泊まった」
「…あんまり覚えてない」
「ほぼ気絶してたからな」
「迷惑すぎるね…」
苦笑した奏太が、落ちそうな毛布を持ち上げてくれた。
「そういえばそのとき、もう次はないなって思った…」
「そのくらいで」
「これで会うのは最後だって…それほど私はダメだった」
腰回りが少しずつ温かくなってきた。
唸るような痛みが紛れ、体を横に倒してみる。
「だからね、不思議だった。なんでまた会ってくれるのかなって」
「その程度だと思われてたのかよ」
「ふふ…そうじゃないけど」


