しばらくソファに身を沈めていたが、再び訪れた突発的な不快感で無意識に洗面所へ向かう。
リビングに奏太の姿はない。
鏡に映る顔の酷さに笑いさえ込み上げた。
一度は洗面台に手を掛けたものの、壁を伝いながらトイレの中へ。
冷静な判断は残されていた。
瞼が異常に重い…
トイレの中が渦巻いていて、足の力が抜けるように座り込む。
気持ちが悪い…。
手すりを掴んでどうにか体勢を保つものの、心臓の鼓動が鳴り止まず、強い吐き気を自覚する。
膝の間に顔を埋めても視界が揺れているのがわかった。
手すりを握っていた手に汗が滲む。
洗面所から物音が聞こえた。
向こうへ出て行こうにも顔を上げることが出来ず、再びじわじわと迫る吐き気に唇を噛み締める。
近くなる足音に、焦る気持ち。
「愛香」
その声にとてつもなく安心したのだが、振り向く余裕がなかった。
焦って立ち上がろうとしたのだが、平衡感覚が乱れていて まともに立つことが出来ない。
頭が左右に揺れる中、喉元までこみ上げるもの。
あ、無理だ、耐えられない。
トイレの中に吐き出したあと、唐突な脱力感に襲われる。
それでも、気持ちの悪さは改善していない。
吐き気か痛みか気のせいか、
何がなんだかよくわからない。
背中に手のひらの感触があった。
こんなところを見られるのが嫌で、首を横に振るけれど。
拒む力も余裕もないんだ。


