「あ、来た」
ぼーっと店内を見渡していたら、店の入り口にスーツ姿が見えた。
見覚えのない女性が二人、彼に近づいて何かを話している。
彼は二人に眉を下げると、軽く会釈してその場を後にした。
「ごめん、いつも待たせちゃって」
「全然」
「道が混んでてさ」
「今誰と話してたの?入り口で…」
「え?あぁ、なんか声掛けられて」
少し嫌そうに顔を歪めた奏太は、溜め息を吐いて向かい側に腰を下ろした。
「だいぶ若かったよね、声掛けた子」
「そう?よく見なかった」
「眼中になし」
「ある方がヤバい」
「…正論です」
苦笑した奏太がメニューを開く。
「どう?体調」
「問題ない」
「そうなんだ、良かった」
「蒼と会うとすぐに問診が始まる」
「そんなつもりはないけどさ」
「そういう自分は?」
「だいぶ元気」
「元気って…小学生かよ」
笑った奏太が店員を呼び、メニューを指しながら丁寧に注文する。
繰り返し確認した店員がその場を去ると、満足そうにメニューを閉じた。
「休みあるの?相変わらず忙しそうだけど」
「あるよ。昨日もそうだったし」
「ふーん。愛香さんは?」
「たまたま休みでさ」
「良かったじゃん」
「通院疲れか毎日テンション低い」
「あぁ、そうだよね」
「だから思い切って出掛けてきた」
「ふーん、…どこに?」
「ちょっと遠くまで食事に行ったくらいだけど」
そう言ってスマートフォンに表示した写真を見せてくれた。
「見たら分かる、高いお寿司」
「まーね。好きだからさ」
「そうなんだ」
「たまにはってやつ」
昨日のことを思い出しながら話す様子が幸せそうで、思わずニヤけてしまう。
「え、なに」
「いいや、べつに」


