「ほら、立って。先寝ちゃうよ」
その言葉にピクリと反応し、脱力したまま両腕を伸ばす。
「やだよ、自分で歩いて」
「お願い、今日だけでいいから…」
「…ったく」
結局許す自分も甘い。
自覚はあるだけマシだろう。
背中と膝の裏に両腕を入れ込むと、首に愛香の手が回る。
随分と軽くなったな、と思った。
「ありがとう、…ごめん」
持ち上げると同時に、胸の中で聞こえる声。
「別にいいけど」
こんなに軽かった?
思い出せない。
ベッドの真ん中に体を下ろし、回されていた手が離れる。
名残惜しそうに伸ばしたままの両手。
「もう寝な、遅いから」
不服そうに腕を下ろし、眉を寄せ、明らかな不満顔。
それを横目に、部屋の電気を消す。


