シャワーを浴びて出てくると、未だソファに見える姿。


散々人のシャツで泣いたせいか、少し表情が楽に見えた。


寝てるけど。




肩を少し叩くと、うっすらと目が開く。



「このやり取り何回目だよ」


「ふふ…」


「寝てなって言ったでしょ」


「も…、それさっき聞いた」


「奇遇だな。俺もさっき言った」


「んふ」


「ねえ、愛香」


「わかってる…」


「ひとつ聞いていい」


「…。うん」





ぼんやりと開いていた目が、丸くなった。


身構えるような表情だった。




「愛香はどうなの」


「…」


「愛香の人生、だから」


「…」



聞かれるなんて思わなかった、というような表情をした。



「一人で考える時間があったっていい」


「…そんなこと言わないで」


「…」


「ひとりで生きるつもりはない…」


「うん」


「奏太が許すなら、私は二人を選びたい」


「…」


「だめ、かな」




咄嗟に言葉が出ず、首を横に振った。




「許すとか、そんな話じゃないから」


「…うん。ありがとう」




髪を撫でたら、再び目を瞑りそうになっていた。



慌てて肩を叩く。




「ここで寝るな」