「ガッチガチ」
肩ごと剝がされそうになりそれを拒んだら、耳元でそう言って笑ったのがわかった。
「はいはい」
ようやく回してくれた両腕で、ポンポンと背中が叩かれる。
ソファに体を押し倒され、回していた両腕が離れた。
それが嫌で手を伸ばす。
呆れたような顔をするくせに、腰を屈めてくれるんだ。
「奏…」
名前を呼びかけて、最後まで言葉が出なかった。
唇が震え、これでもかと言うほど胸に顔を押し付ける。
堪えるものが溢れないよう、バレないよう。
息をするのがやっとなほど、押し付ける。
「顔埋まるわ」
奏太はそう言ったけれど、そのまま受け止めてもらえた。
体が離されることもなく、再び背中に温かい体温を感じる。
その手のひらで静かに背中が叩かれるのが、まるで子どものようだと思った。
情けないけれど、やめられない。
「奏太…」
涙声じゃバレるのに、つい名前を呼んでしまった。
きっと震えていただろう。
「なに、愛香」
だめだ、溢れそう。