「昔ね、奏太と話したことがあるんだよね」
視線を落としたまま、愛香がポツリと言う。
「子ども何人ほしい?性別はどっちがいい?って」
「うん…」
「そしたらさ、無事に産まれてくれたら性別はどっちでもいいって言ったんだよね」
「…」
「人数はひとり産まれて育ててみないとわからない、って言ってさ。そこまで本気で考えなくたって良かったのに、ちょっと嬉しくて」
「ふふ、そうなんだ」
「ただの理想を聞きたかったのもあるけど、奏太子ども大好きだからさ。なんか、本当に大好きなんだなって思って」
少し微笑んだ愛香は、ティッシュを手に取った。
「だからね…、奏太には見せてあげたかった」
目頭に溢れた涙を拭うと、すかさずまた笑顔を作る。
その顔があまりにもつらそうで。
咄嗟に掛ける言葉が見つからず、ただ頷くことしかできなくて。
「でも、一生無理だって決まったわけじゃないんだよね?」
「…ん、そうなんだよね。私が負けちゃダメなんだよ…」
長い長い付き合いだから。
大好きで大切な友達だから。
絶対に報われてほしい…。