「考えちゃうんだよね、ふとした時に」
眉を下げた愛香が、コーヒーにミルクを入れた。
久しぶりに会った彼女はどうも痩せこけたように見えて、より色白くなったように感じた。
「病院は…新しく通ってるの?」
「うん、行ってる」
「目眩は?落ち着いてる?」
「だいぶ。仕事も休まず行けてるし…環境がいいのもあるんだけど」
「良かった、それ聞いただけで安心した」
「季蛍は?ちゃんと食べてるの〜?」
細くて白い指が私の頬を押す。
「食べてるよ、毎日。問題ない」
持ち寄った昼食はなんだかんだ二人で完食した。
誰かと食べると食が進むんだよね、なぜか。
「奏太がさ、言うんだよね。何も考えなくていいよって」
「うん」
「でもさ、考えちゃうよね。独りになるとさ」
「…そうだよね」
「奏太の気持ちが離れていくような気がする…」
「…そうかな」
「そんなことないのはわかってるよ…でも、奏太の本音は私にはわからない」
愛香との付き合いはそれなりに長いと思っているが、初めて見る不安な表情に言葉が出なくなった。
「どうして私なのかなって、思っちゃうんだよ…」
絞りだすような声。
我慢できず真隣に移動し、そっと背中に手を添える。
「私にできること、何もなくてごめん」
「ううん…話聞いてもらえるだけで嬉しいよ。ありがとう」
寄せてきた体を胸で受け止めて、肩をさすって。
小刻みに震えているのがわかり、苦しくなった。
じんわりこみ上げたものがわからないように、そっと指で拭った。