「疲れたでしょ、流石に」
互いの体温で布団の中が温まるのはいつぶりか。
眠る気配のない季蛍は、壁に背中をピッタリと合わせているけれど。
そのうち眠気は来るはずだ。
「別に大丈夫だよ、いつも通り」
「そうならいいけど」
「高島先生にも同じことを言われた」
「だって彼、一日隣にいたでしょ?」
「過剰に心配しちゃって、大丈夫だって言っても信じてもらえない」
「はは、俺は安心だったけど」
「…でも、正直心強かった」
そう言って笑うと、頭をコテンと壁に預ける。
「ずっと隣にいたわけじゃないけど、やっぱり手が震えたり、ダメかもなって思う時もあって…」
「……」
「男性の患者さんに怯えたり、そんなの絶対ダメなのに、今日はそうだった」
笑いながらそう話したが、咄嗟に言葉が出なかった。
「だからたまに声掛けてくれて、助かった」
「…そうか。よかった」
「うん、よかった。本当に甘えだけど」
無意識に首を振っていたが、季蛍は視線を下に落としていた。
「でももう大丈夫だし、仕事中に覗きに来なくていいから!」
「…わかってる」
「ふふ。顔見たら、離れるの嫌になっちゃうもん」
「……」
肩に回していた手でグッと体を寄せると、胸を押し返された。
それでも、手を緩めるつもりはない。
反射的に出された手のひらが引っ込んだ。
「つい」
そう言って笑った。
「ん?」
「…ううん、温かいなって思っただけ」
「寝れそう?」
「…これなら。」
「じゃ、このままで」