「迎えに行くの?」



「うん、遅いし」




店の外で電話を済ませた奏太が、時計で時間を確認する。




「優しいところあるんだ」



「俺をなんだと思ってんの」



「はは、別に」




外はどうやら雨が降り始めているらしく、来店する客が濡れた傘を手にしている。




「割と降ってる?」



「結構降ってる。それに寒い」



「天気予報になかったのに」



「愛香も同じことを言ってた」



「傘 持って行った?」



「さぁ…、どうだろ」



「それじゃあ迎えに行くべきだな」



「ま、帰り道だから許容範囲」





互いに荷物を抱え、座席に忘れ物がないかを確認する。





「あ、愛香さんにお礼伝えてくれる?頻繁に連絡をくれているようだから」




「あぁ…うん。でも、どちらかというと愛香が相談を聞いてもらってる立場のような気がする」




「そうなんだ」




「俺を信用してないな、きっと」




「気を使ってるだけ」




「いや、男にはきっとわからないって話そうともしない」




「奏太が適当に返事をしてるんじゃないの?」




「そんなつもりはないけどさ」






会計を済ませて店を出ると、雨の乾いた匂いがした。



降り続いているのにも関わらず、じっとりとした嫌な空気が身を包む。




「じゃ、ここで」



「おう。お疲れ」




ひらひらと手を振ったあと、小走りで車の中へ。




エンジンを付けると、時刻が表示される。




もう、眠っているだろうか。