「様子見します?」
「うん、今のところは」
「了解です」
すっかり眠り込んでしまった季蛍の寝顔を確認し、ふっと微笑んだ。
それはそれは愛おしそうに。
「好きですね、本当に」
「つい、ホッとして」
そう言って笑うと、患者用の丸椅子に腰を掛ける。
「もう何年も前のことなのにな」
「……」
「まだこうやって苦しまなきゃならないのが、可哀想でならなくて」
と言いつつ、彼は笑っていた。
見守る形でしか寄り添えないことが、とても情けないのだと。
そう言って肩を落としていた。
時間が解決してくれず、強引に薬で体を休ませることが必要な時もある。
二人の間には、計り知れないほどの苦しい時間があったに違いない。
「薬も安易に渡せないよ」
「そうですね…」
「もうしないってわかっていてもね。一番つらいのは本人だからな」
長年の付き合いであっても、自分にはハッキリと想像ができない。
心を抉られる感覚が。
トラウマに縛られる辛さが。