「どうしてもするんですか…?」



パチン、と手袋をはめた後、季蛍がポツリと呟いた。




「ん?」


「点滴…」


「だいぶ楽になると思うけどな。怖いの?」


「怖くなんか…」



点滴の針が入りづらいことを知っているからこそ怯えているのだろうか。


失敗出来ないことはきちんと理解しているけれど。


別の理由を正直に言えず、気を使っている可能性も…なくはない。






「蒼先生戻ってきたらやってもらう?」


「…大丈夫です、信じてるし」


「はは、プレッシャー掛けられた」


「…」


「触っていい?」


「…ん、はい」



駆血帯を腕に巻き、一度で確実に入りそうな場所を指先で探る。




「…高島先生」


「ん?」


「私、仕事休みたくない…です…」



食事をまともに取っていないせいか 顔色が青白く、声を出すのも辛そうに思える。



「…仕事?」


「先生はきっと私のことを考えて…」



そう言って静かに目を閉じると、左手を胸に当てた。



「どした?気分悪いか」


「大丈夫です…」


「もちろんそういう話は聞くし、こうしたいって言ってくれたら考える」


「……」


「今は季蛍の気持ちを最優先したいと思ってるよ」


「…でも、きっと蒼は反対します」


「そうかな?」


「わかってしまうんです、蒼は」




診察を一時的に代わると判断したのは彼だった。


隣でずっと様子を見ていたからこそ、今日は無理だと判断できた。


だからきっと、同じように、言葉を掛けるに違いない。


季蛍がそう勘付いているように。





「相談して決めようよ」


「…はい」


「おしまい」



針を固定し、毛布を少し引き上げる。



「なんか食べた?」


「…大丈夫です」


「食欲はまだ戻らないか」


「食べる気はあります」


「そうか。まぁ、ゆっくりね」




終始手が震えていることには気がついていた。



悪寒によるものかどうか判断はつかないが、無意識のうちに警戒されているのだろう。



表には出さないだけで。