視界が色を取り込んだ。
床に散乱した白いモノが目に入ると、心臓がギュッと締め付けられた。
取り返しのつかないことをしたのだと。
…しようとしていたのだと。
頬が濡れていた。
思い返せば記憶は存在するのだが、今はそれを避けたかった。
息がまともに吸えるようになると、背中が温かいことに気がついた。
温もりを与えるものが手のひらであると認識したが、払おうとは思えない。
私は、それがとても優しいことを知っている。
「あお……」
顔を上げると、体は少し離されていた。
そうして目が合うと、抑える間もなく涙が溢れた。
とても辛そうな顔をしている。
思い出せない。思い出したくない。
「そんな……顔…しないで……っ」
嗚咽に紛れて言葉を繋ぐ。
「謝るからッ……、大丈夫だから…ッ」
取り返しがつかなくなるようなことを しようとした。
そうして、蒼を巻き込んだ。
すべて知られてしまう…。