いつしか 異性を怖いと思うようになった。
彼らが私を "物" だとしか認識していないと気がついてから、関わることを極力避けてきた。
ただの友達であるはずなのに、拒むと彼らは目つきを変えるのだ。
『そういう目をするからだろ』
爪が食いこむほどの力で顎を掴まれ、そう責められたこともある。
私に全て問題があるのだと、ただの良好な友人関係であった彼が言っていた。
冗談だと思いたかった出来事が、何度あったかわからない。
親しい友人でありたかった自分と、それ以上の関係になりたかった相手。
気持ちの差が生まれるのは、煽るお前が悪いのだと、決まってそう言われた。
そういったことがある度に記憶は強引に消してきたのだが、ひとつでも思い出してしまうと また消し去るのが難しい。
所詮、欲求を満たす "物"
彼にとって、彼らにとって。
唯一 学生時代から心を許せた彼だけは違っていた。
どんな状況であっても、「嫌」だと言うと それを受け入れてくれた。
手を繋ぐことすら拒んだ私に、
『隣を歩いてくれるだけで十分だから』
そう言ってくれたのを覚えている。
すべて蒼だったから、
こうして克服できている…。
『友達でしょ?』
嫌になるほど思い出す。
あの、独特な空気を。
ただの好意だと、受け止めるべきだと、強要される恐怖を。