抵抗が止み、腕の中で肩が激しく上下する。
酷く興奮したせいか、呼吸が不規則に乱れた。
「飲んだ?」
首は 何度か左右に動く。
「……ッ」
錠剤を握っていた手のひらが、胸を押した。
「ごめん……ッ」
唇を噛み締めると、さっきと同じような表情を見せた。
そんな目をされては、責める気にもならない。
こういった行動をしなければ、薬で体を傷つけなければ、ならない理由が存在する。
リスクがあることを知っていながら、そんなことをしようとした訳が。
「…ッ、怖いの」
拒む仕草のあと 向けられた目が、胸を強く縛り付けた。
『 いたい 』
囁くような声だったが、季蛍は確かにそう言った。
震えた左手が 胸元の服を握りしめると、右手の指先が頬に沿うよう添えられる。
たったそれだけで、言いたいことが理解できた。
蘇った記憶が、薬を欲していたのだ。
心が死んでいく前に、意識を消そうと。
「なんにもされないって、大丈夫だって…ッ」
そこで初めて、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
『 わかってるのに 』
悲痛な声が 更に胸を締め付ける。
堪らず、両手を回したくなった。
もう、怯えなくていい と。