「いやっ…」
薬を飲むために起きたのだと、初めから気がついていた。
指摘は避けた。
その必要はないと思った。
しかし、過度に錠剤を取り出す音に気がついては、放っておくわけにはいかない。
キッチンの床に 蹲る体。
震える手のひらに、それらは握られていた。
何も言葉が出ず、抵抗する体を背後から包み込む。
「や…ッ…離して…ッ」
数分前は触れることすら躊躇っていたが、この際そんなことを気にする余裕はない。
指を絡ませるようにして拳を開くと、握られていたものが散った。
掛ける言葉が見つからない。
床に散乱した錠剤が目に入ると、ただ 悲しくなった。