「帰ったら何か食べよ?」 「自然と俺が作ることになるけどな」 「私、何か作ろうか?」 「あのなぁ…」 話を聞いていたのか、と疑ってしまう。 ため息をほっとついて自動ドアを抜けると、外には小雨が降っていた。 冷たい空気に体を震わせて、車へ向かおうと思ったところで、見覚えのある姿が目に止まった。 「…あれ?」 どこか焦っている様子の彼女は、腕に小さい子供を抱えているようだ。 「陽さん…?」