「季蛍帰った?」
高島に声を掛けると、くるりと椅子を回して席を確認した。
「はい、結構前に」
「そうか、ありがとう」
「別々なんですね、今日は」
「んー、まぁ」
…というより、先を越されたというか。
今朝も逃げるように 家を出て行った。
帰りこそ捕まえようと思っていたが、逃げ足が早すぎる。
「…まぁ、そんな時もあるか」
「はい?」
「いや、なんでもない」
あれからというもの、季蛍は何も言わない。
強引に問い詰めたらいいのだが、接すると 拒みようが異様なのだ。
家にいる時でさえ、ある程度 距離を置くべきだと思ってしまう。
拒む理由があることは、一番身近な存在であるからこそ 理解しておかなければならない。