「座ってもいい?」
「あ、はい」
咄嗟に笑顔を作ったものの、引きつっているのだろうなと思った。
そう思えば思うほど、笑い方がわからなくなるのだけど。
「……」
斜め横に腰を下ろそうとしていた港くんは、向かい側の席についた。
きっと何かを察したのだ。
そういう顔を私がしてしまうから。
「すみません、そろそろ帰ります」
「あぁ、いいのいいの」
「そんなに長居するつもりじゃなかったし」
「今朝陽が家へ招くと嬉しそうに言っていたし、事情はわかってたよ」
「…。そうなんですか」
「うん、会えるの本当に楽しみだったみたいね」
「ふふ、嬉しいです」
「今ご飯用意してくる!あ、季蛍ちゃんに余計なこと言わなくていいからね」
「言わないよ、そんなこと」
キッチンへ入っていく陽さんに、
「余計なことってなんだよ」
と苦笑した港くんと、視線を交わした。
「ちょっと久しぶりだよね、話すの」
「そうですね、病院じゃ滅多に会わないし…」
そう言いかけてあの日のことを思い出し、つい俯いてしまう。
「……。ご飯食べた?陽が作ったようだけど」
そんな私を見て話題を変えてくれた港くんは、器の中を覗きこんで笑った。
「食べたんだね」
「…はい、すごく美味しかったから」
「良かった。陽が喜ぶ」
「なんだかいろいろ気使ってくれて…、負担になっていないかちょっと不安です」
「…だってほら、終始笑顔だし。楽しくてしょうがないって感じ」
「んふ、そうならいいんですけど」