「ごめん、季蛍ちゃん。こんなに早いとは思わなくて」
申し訳なさそうに眉を下げた陽さんに続き、港くんがにっこりと笑ってみせた。
「ただいま!」
そう言って片手を上げるので、思わず笑ってしまう。
「言う相手間違えてるから」
鋭く指摘した陽さんがカバンを受け取り、苦笑して首を傾げる。
「ごめんね」
「いえ、全然」
袖を抜いたスーツの上着を陽さんに手渡すと、港くんが言った。
「結は?」
「寝ちゃった」
「そうか。見に行っていい?」
「えー、起こさないでね」
「ちょっと覗くだけ」
そう言って軽い足取りで寝室へ向かう港くんに、陽さんはまた苦笑いを向ける。
「起こされたら困っちゃう」
「でも、気持ちちょっとわかります」
「うん、実は私も」
そう言って目を見合わせ、クスリと笑い合った。
「毎回寝られちゃって可哀想なの」
「眠くなる時間帯ですね」
「そうそう、帰宅時間と被っちゃって。ちょっと荷物置いてくるね」
カバンと上着を掲げた陽さんは、そう言いながらリビングを出て行った。


