「季蛍ちゃん」
二杯目の紅茶を置くのと同時に、陽さんは言った。
「蒼くんとなにかあったの?」
「…え?」
「勘違いだったらごめんね」
「…どうしてですか?」
「うーん、話が出る度に顔が強張るから」
「いえ、何もないですよ」
「そう?」
「言い合って家を出るものなら、きっと荷物でも持ってます」
「んふふ、そっか」
「すみません、心配されちゃうような顔をして…」
「ううん、ちょっと聞いてみただけ」
本当に何もない。
接触を避けているのは私だけだ。
指摘されるのが怖いだけ。
その日を 引き伸ばしたい一心で。