「あー、もう…」
電池がプツンと切れるように、体の動きが静止した。
髪は濡れたまま放置され、ソファーに身を沈めている。
いつもなら放っておくに違いないが、状況も状況だ。
「痛みを悪化させたいのか?髪もろくに拭かないで」
両手で髪の毛をすくい上げ、タオルで水気を拭き取ってやる。
「早めに薬飲んで寝な」
「…ないもん」
「なんだ、買ってないの?」
「そんな余裕ない」
「それで仕事に行ったのか。…驚くな」
「…。休めるわけない」
指先で軽く髪を梳かし、ドライヤーのコードを差し込む。
「…なに?」
ポツリと何かを呟いたような気がした。
「…怒ってる?」
「…なにが?」
「こんなんで…」
「……」
「…面倒くさくてごめん」
「…。いいから前向け」
再度何かを言っていたようだが、ドライヤーの風音に掻き消されてしまった。