「プライベートに口を出してくる人間の話は忘れていい」
目線を少し上げると、奏太は箸を置いていた。
視線がまっすぐ私を捉えていた。
「悩む必要もない」
励ましの言葉も、今は素直に受け取れない。
面と向かって言われたことなんてないんだから。
この先だってないんだから。
奏太にはきっとわからない…。
時計の秒針が響くほど、再び静寂に包まれた。
奏太の目が離せなくなる。
今、何を考えているの?
『悩む意味がわからない』と、呆れた視線を送っているの?
感情が読み取れない。
視線は合っているはずなのに。
ポロン、と涙がこぼれた。
無意識だったので、慌てて指でそれを拭った。
「ごめ…」
視界がぼやけていたのか。
合っているようで 見えていなかったのだ。
瞬きをすると、はっきりと目が合った。
それでも、奏太が何を思うのか 私にはわからなかった。