「陽さんは元気?」
「声を聞く限りは」
「会えてないの?」
「なんだかんだ。電話じゃテンション高いけどね」
本当のことは 会ってみないとわからない。
隠すのだけはやけに上手いのだ。可能性は捨てきれない。
「少しの間帰らないと怖いよね」
「…どういうこと?」
食べ終えた食器を片しながら、蒼はわかりやすく苦笑した。
「いや、一週間程度顔を合わせなかったりして」
「あぁ」
また『意味がわからない』というような顔をされるかと思ったが、瞬時に理解したようだ。
長い付き合いの共感者はやはり違う。
「ほんと焦るよ、知らない間に寝込んでたりなんかして…陽には相当無理をさせてる」
「大変な時期だな。産休中の季蛍を思い出す」
「どう支えるのが正解なのかと…」
蒼の前ではつい弱音を吐いてしまうが、やはり頼れるのだ。そういった存在は本当に助かる。
白衣のポケットに手を突っ込み、振動によって気がついた連絡を受ける。
「やっとくよ」
トレーを自分の方へ寄せた蒼に
『ごめん』
と伝え、席を立った。
なんとなく、今日も帰れないかな、と思った。