「ごめんなさい、ちょっとお手洗いに」



荷物を抱えてその場を離れると、全身の力が抜けた。


もともとお酒は好きな方だが、体に異変が現れてからというもの 遠い存在になった。


医者に止められているので飲むわけにもいかないし、進んで飲みたいとも思わない。


飲めないことが場の居づらさにも繋がるので、こういう場にはあまり来ないようにしていたが…。


その判断は正しかったのだな、と今更思う。


鏡に映った顔色の悪さに驚いてパウダーを叩き、深呼吸を繰り返す。


いつの間にかお酒の匂いですら拒絶するようになってしまった…。