素直に痛みを伝えたら、咲は少し動揺した。
握っていた手の力を少し緩めて、
「…どこが?」
そう聞いた。
咲の手のひらに包まれていた手を、そっと胸に当てる。
「我慢してたんだけど…」
その言葉に咲が動揺を見せたことは、暗闇の中でも察することができた。
「念のためね」
松山先生にコールが掛かる。
咲は「念のため」と言ったけれど、今の私にそれが必要であるということは分かっていた。
「…にしても、それでいてあの大声はなかなかだな」
不安にさせないようにと、咲が話をしてくれる。
「…でしょ?」
「あんなに声が出れば体調はいいものだと誤解しかねないなぁ」
『驚かせたのは咲の方じゃん』
…と、言葉を発するはずだったのに。
喉に詰まる何かが、それを制した。
「永菜?」
一瞬、呼吸が出来なくなった。
慌てて息を吸おうとすると、込み上げるものが押し寄せた。
「永…」
咲が名前を呼ぶ前に、限界を超えていた。
真っ白なシーツに、赤い何かが散った。