「誰だ?夜泣きしてるのは」
明かりを照らすと、小さく叫ぶ声が聞こえる。
「もーっ、びっくりさせないでよ!」
こちらへ向かってタオルが投げつけられる。
「見まわり」
「嘘つき」
「嘘じゃないぞ。永菜専用の見まわりだ」
「何それ!頼んでない」
泣き顔を見られることが嫌なのだと、態度からそう受け取れた。
ベッドの傍らに椅子を寄せて腰を下ろすと、避けるように俯いてしまった。
「永菜」
「…何?」
「お姉さんが来てたね」
「…うん、会ったの?」
「帰り際に声を掛けてもらった。元気そうな永菜を見て安心したと言ってた」
「そうなんだ…」
「手術、怖いか」
「……」
「不安だろ?…それとも、割とそうでもないか」
「…怖いよ、だって手術だもん」
「どのくらい怖い?」
「…咲が怒ったときくらい」
「あーあ、それならそうでもないな」
「何それ、自覚ないじゃん」
「そもそも俺は怒らないぞ」
「ふふ、冗談。咲が怒った時よりもうーんと怖い」
微かな明かりで照らされる永菜の顔。
口元は微笑んでいるが、頰には若干涙の気配がある。