「お父さんたちはきっと夜顔を見せると思う。手術って聞いて一番慌ててたのはお父さんだからね」
「いいのに、そこまで騒ぐものでもないし」
「心配するのは当然でしょ?」
「うん…それは分かってるんだけど…」
「私たちが心配したら重荷になるって?それはそうでしょうけど」
「……」
「永菜の考えてることなんてわかるよ」
「うぅ…」
「それは分かってる上での心配なんだからね」
「…ありがとう」
「お母さんもかなり緊張してるみたいだし、そこはちょっとわかってあげて」
「緊張…って…」
「笑っちゃうよね。それは永菜の方だってのに」
『あ〜、可笑しい』
と笑った姉は、食べ終えた容器を捨ててくれた。
「これから会社に戻らなきゃ。ごめんね、少しだけだったけど」
「ううん、ありがとう」
『はい』
と差し出された片手。
すかさず右手を乗せる。
「頑張ってね」
「…うん、頑張る」
「もうじゅーぶん頑張ってるとは思うけど!」
「…どうかな?」
不安なときの家族の温もりは、とても安心する。
「帰り、咲くんに会えるかな」
「うーん、忙しいかも」
「そうだよね。言いたいことはたくさんあるんだけどな」
「余計なこと、言わないでね」
「余計なことって?」
「咲が心配するようなこと。飛んでくるんだもん」
「ふふふ、わかってる」