「永菜、明日手術なの?」
アイクスリームが食べたい、と言ったら、姉が届けに来てくれた。
「うん、そうだけど…知らなかったの?」
「今朝聞いたの。ビックリして電話して今に至る」
「忙しいんだね、仕事」
「まーね」
ビニール袋からとり出されたバニラアイスの容器を指で押すと、それは軽くへこんだ。
若干溶け始めているみたいだ。
「永菜はこのくらいがいいでしょ?」
蓋を開けると、真ん中はまだ固まっていた。
容器の縁周りのアイクスリームは溶けている。
「うん、これくらいが好き」
「いただきます」
スプーンで縁の周りをなぞり、口の中へ。
懐かしいバニラの風味に、口元がふわっと緩んでしまう。
「美味しい」
「そう?よかった」
病室の片付けをしてくれる姉は、振り向くと微笑んだ。
「これ、新しいね」
畳まれていた服が広げられる。
「うん、今日初めて着るの…なんで気づいたの?」
「前までなかったでしょ?」
「うん…気づいたの沙菜が初めて」
「プレゼント、でしょ?」
「うん、咲がこの間買ってくれたの…」
「さすが咲くん。センスある」
「ふふ…」
丁寧に畳み直すと、あった場所へとそれを戻した。