5日間、という約束は守られた。
それでも、6日目は最悪だった。
主治医から説明された手術の必要性。
痛みを引き起こす病の正体。
取り除く必要がある、というのは理解できても、「手術」という言葉にどうしても怯えてしまう。
「咲くん」
「ん?」
衣服の整理をしてくれている咲に声を掛けると、手を止めてパッと振り向いた。
「…ううん、やっぱりなんでもない」
「なに?」
「本当に何でもない」
「何を言おうとした?顔に出てるぞ」
「ふふ。どうしてわかるの?」
「見たらわかる」
「隠し事なんてできないね」
「永菜は顔に出やすいからな」
「そんなつもりないのに」
「本当はなんなんだ?」
「本当に何でもない。忘れちゃった」
「ホントかよ」
「うん、本当だよ」
と、言ったのに。
「な、なに?」
「いや?」
至近距離で見つめられると、自然と視線を逸らしてしまう。
「何かあったら言ってね」
「うん…ありがとう」
"手術、やらなきゃダメなんだよね?"
咲と目が合わなければ、咲がこっちを振り返らなければ、言ってしまっていたかもしれない。
"少し怖い"
と、言ったところでどうしようもない感情を表に出していたかもしれない。
「着替え、ここに入れとく」
パタン、と扉が閉められた。
「ありがとう」
「永菜はこれから検査だったっけ?」
「そうだよ、二つも」
「そうか、じゃあ戻ってきたら何か買ってきてやる」
「子どもじゃないもん…」
「あ、そう?じゃあナシ」
「うそ、欲しい」
「ん。正直でよろしい」
クスクスと笑った咲は、頭に一度だけ手を置いた。
「戻るね」
「うん…、頑張って」
「永菜も」
「うん、…頑張る」