「永菜、どう?」
「うん…、全然平気」
起床時に感じた小さな違和感。
瞼の腫れぼったい重みは夜更かしが原因だと思っていたが、時間の経過と共に頭痛を伴うようになっていた。
リビングで仕事をしていた咲が朝食を準備してくれたが、食べられる気がしなかった。
痛みがあることを正直に打ち明けると、咲は優しく微笑んだ。
それが、せめてもの救いだった。
体温計は平熱を表示する。
幸い、頭痛以外には何もない。
痛みが引けば食事は取れる。
さっきまでは、そう思っていた。
「永菜」
足元に咲がしゃがみ込む。
しかめた顔がわからないよう、手のひらで覆うけど。
それは逆効果なのかもしれない。
「一度寝た方がいい。薬、効くまで少し掛かるから」
「…うん」
一昨日は海へ夕日を見に行き、昨日は少し遠くまで。
午前中は自宅で過ごし、夜は外へ食事へ行く…。
今日の予定はそうだったはずだ。
それなのに…。
「何かあったら呼んで」
寝室までついてきてくれた咲の手が、そっと頭を撫でる。
「…ありがとう」