「心が洗われたような気分」


「…俺も」


「来て良かった」


「永菜が提案しなかったらきっと海に来ることなんてなかったな」


「咲はあんまりこういうところに来たがる人じゃないもんね」


「そんなことないよ」


「ふふ、そう?」





不意に立ち上がって腕を伸ばした永菜は、一度大きく深呼吸をした。



「咲」


「ん?」


「…何でもない」


「何それ」


「ちょっと呼んでみたくなっただけ」


「……」







「永菜、帰る?」


「……」


「夕飯、考えないといけないし」


「うん、そうだね」




名残惜しく見えるのは事実だが、少しホッとしているような…俺にはそう見えた。


「よし!戻ろう」


「また来れるよね?」


「あぁ、来れるよ」


「次は夕日が見たい」


「いいね、そうしよう」


「なんなら明日でもいいでしょ?」


「はは、正気かよ」


「うん、少し遅くに来るの」


「…まぁ、悪くないかもな」





車のキーを開けると、永菜は少し寂しそうに、一度向こうへ目をやった。