永菜が食器を持ってくる気配がないので、キッチンから少し覗いてみた。
朝食からそんなに気を張っていたら疲れるだろ…?
そう言いたくてたまらないが、頑張る気持ちは尊重したい。
「永菜、無理しなくていいよ」
「うん、ごめんね…」
「俺が作ったものだからとか、そんなの気にしなくていいから」
「…うん、食べられると思ったんだけど」
「こんだけ食べたら十分」
「次からちゃんと最初に量減らすね…?」
さっきまで「美味しい」と笑顔を浮かべていた永菜はどこへ?
「ほら」
両手で頬を摘んでやると、不満そうに顔を歪ませた。
「なに?」
「笑え」
「んー、ほっぺとれる!」
「ほっぺは落ちたんじゃなかったのか?」
「うん、落ちたよ!」
「ふはは…ッ、落ちたのかよ」
「だって咲のお味噌汁美味しかったもん」
「はいはい、ありがとう」
「じゃあ離して…!?」
両手を離してやれば、睨んでいるのか笑っているのか分からないような顔をした。
「ほら、今日は何をする?永菜が決めていいよ」
「…本当?」
「その通りにしよう、できるだけ」
その提案に永菜は微笑み、
「ごちそうさまでした」
と手を合わせると、食器をキッチンへ運びに行った。
「私ね、行きたいところがあるの」