「永菜ちゃん、ちょっとそっち持ち上げて」
「はい」
松山先生は、いつもと変わらない時間にやって来た。
「よーし、問題ないな」
丁寧に聴診を済ませると、点滴と薬の確認が入る。
「昼は食べた?」
「はい、とっくに」
「そうか。食欲があって何よりだ」
「…松山先生、来週外泊の許可が出たって本当ですか?」
「あれ?どうして知ってる?」
「咲が…」
「教えに来た?」
「はい」
「そうか…。先を越されたな」
「ふふ、早く伝えたいって一瞬顔出したんです」
「永菜ちゃんの喜ぶ顔が見たかったんだな、さては」
「そうかもしれないです」
「むしろそれ一択だな」
「ふふ、ですね」
「検査結果も見て考えたよ。息抜きになるでしょ?」
「はい、本当に嬉しいです」
「良かった。咲にうんとワガママ言ったらいいよ」
「迷惑かけられないですよ!」
「1週間しかないんだぞ?ワガママ言って甘えたらいい」
「…帰りたくなくなっちゃいますね?」
「あぁ、それもそうだな」
ハハッと笑った松山先生は、何かを取りに行った。
「じゃあ、俺からはこれを伝えておくね」
初めて見る錠剤がいくつか置かれると、松山先生はベッドの傍にしゃがみ込むように腰を下ろした。
「外泊が中止にならないように、薬を増やしてもいい?」
「これだけですか?」
「そう」
「はい、少しくらい変わらないです」
「この1週間は体調管理に全力を尽くすから」
「ふふ、ありがとうございます」
「永菜ちゃんは無理しない程度にしっかり食べてね」
「わかりました」