「つらいな…」
薬の影響が出た初めての夜。
永菜の担当医は今夜オペの予定だが、長引いているようだ。
強い頭痛と出るものがない吐き気は、短時間で体力を奪っていく。
「んふ、お仕事戻ってもいいよ?」
苦しい症状がありながら、気を利かせて言うけれど…。
「大丈夫、当直じゃないから」
「だったら寝ないと…!」
「……。俺のことはいいよ」
「よくないよ…、咲が体調崩したらどうするの?」
「大丈夫だ」
「適当なんだから…」
引きつった笑顔の合間に見せた、苦しい表情。
痛みに顔を歪めた…そんな感じだ。
「咲」
「何?」
「外の空気吸いたい」
「……そうだな。窓を開けるか?」
「ううん、大丈夫。無理なのはわかってるよ。それに寒くて冷えちゃいそう」
"綺麗な空気を吸いたいなっていう今の気持ち"
そう言って一度は笑った永菜だったが、すぐに眉を寄せて俯いてしまった。