「いただきます」


「どーぞ」





生クリームやフルーツが上手く一緒に乗るようにプリンをすくい、口の中へ。


まず一番初めに感じるのは、生クリームの優しい甘さ。


そしてフルーツの微かな酸味に、本来の甘み。


口の中ですぐに溶けたプリンの優しい味は、どこか懐かしい気もする。





「美味しい…!」



私が求めていたものは、そのまんま この味だった。



「だろ?」


「プリン優しい…、大好きな味」


「そうそう、この顔が見たかった」




自然と頬が緩んでしまうと、咲は安心したように笑った。


「美味しいよな」


「美味しいよ!すっごく美味しい」


「永菜も気に入る味だろうと思って」


「…。咲も食べたの?」


「食べたよ、事前調査」


「なにそれ…」


「永菜体調崩してたから代わりに食べたの」


「…そんな前にも買ってきてくれてたの?」


「そうだぞ」


「…。ふふ…ッ」


数日前は渡せなかったものをサプライズする気でいたから、あんなにワクワクした顔で入ってきたんだ。


そう思うと、ちょっと笑える。


私に喜んで欲しくて、ケーキ屋さんに寄る咲の様子が想像出来て。


そこまでしなくたっていいのに…


と思うくらいなのに、咲はコソコソ用意して。



微笑ましくて、



嬉しくて。






「あ」


突然鳴り響いたPHSは、咲の呼び出しを知らせる。


「はい、

……わかりました、向かいます」


用件を聞いた咲は、掛けてあった白衣を羽織った。


「永菜ごめん、食べ終わったらここに…」


「うん、大丈夫!」


「後で来るから…」


「もー、大丈夫!ほら、早く行って!」





慌ただしく向かう準備をした咲は、爽やかな笑顔を残して病室を出て行く。


「…何あの顔」


去り際にあの顔…、絶対笑わせに来ている。