「永菜」
一日ぶりに病室へやって来た咲くんは、いつもよりテンションが高いように思えた。
「どうしたの?」
「いや、別に」
何やら小さな箱をベッドサイドに置くと、いつものように椅子を寄せて腰を下ろす。
「熱引いて良かったな、検査も大人しく頑張ったらしいじゃんか」
「うん…って…、採血くらい我慢できるよ」
「永菜が不安だって言ったんだぞ」
「採血後の話だもん。今回は大丈夫だった」
「と言うより、気絶してたんだろ?」
「ちがうよ、寝てたの」
「よく言うよ」
「怖くてじゃないもん。具合悪くて」
検査のあの日、時間が経つにつれて体調は悪化した。
怠くて重い体を引きずりながら検査室に入ったが、ベッドに寝てからの記憶はほぼない。
一日もあれば、そんな体調不良からも開放されたけれど。
「食欲は戻ったか?」
「だいぶ…」
そう答えると、咲は持ってきた箱に手をやった。
「永菜が食べたいって言ってたの」
そう言って箱を開けると、中にはプリンアラモードが。
「食べたい時に食べな」
「え!?買ってきてくれたの?」
「あぁ」
「しかも何か…、売店のやつじゃないの…?」
私が知っているプリンアラモードとは、明らかに様子が違う。
「ケーキ屋さんで買ってきた」
「え?いつ!?」
「朝」
「無理しなくていいって言ったのに…!」
「無理してないよ。そこ入れとくから」
「今食べる…」
「…食べられる?」
「うん、大丈夫」
お皿に取り出されたそれは、私が知っているプリンアラモードよりも、何倍も何倍も プリンアラモードだった。