「なにか甘いもの食べたいね」
「甘いの?…例えば?」
「なんでもいいの。ケーキとかプリンとか」
「王道のやつね」
「プリンに生クリームが乗ってるのあるよね?」
「プリンに?」
「そう、生クリームとフルーツが乗ってるの。病院の売店にもたまに売ってる」
「あぁ、プリンアラモード」
「それ!たまに食べるとすごく美味しいの」
「よし、あとで見てきてやる」
「本当に?ありがとう」
「そうしたら検査も頑張れそうか?」
「うん、頑張れる」
"でもさ…"
「売店にないときの方が多いと思うの。期待しない方がいいかもしれないよね?」
「そん時は俺が走って買いに行こう」
「ばか、そんな暇ないくせに」
「よくお分かりで」
「分かるよそんなの」
クスクス笑う永菜は、ベッドサイドの時計を手にして言った。
「時間大丈夫?」
「うん、そろそろ戻ろうかな」
「ありがと、来てくれて」
「おう。必ず今日とは約束できないけど、買えたら持ってくるからな」
「ううん、いいよ。無理しないでね」
「永菜もな」
「わたしは大丈夫!」
「…ふふ、そうみたいだ」
頭をポンポンしてやると、わかりやすく喜んだ。
「じゃ、行くね」
「いってらっしゃーい」
病室を出て、忘れないうちにメモ帳へ。
“プリンアラモード”
必ずは約束できない
永菜と何か約束事をするときに言う言葉。
患者の急変や呼び出しが付き物であるから、永菜との約束は"必ず"守れるとは限らない。
毎回俺がそんなことを言うから、
"わかってるよ!"
永菜はそう言うけどね。