「永菜」
「咲!」
病室を覗いてみたら、食事中のようすが見えた。
あまり進んでいないように思えるが、口は動いている。
「またお仕事抜けたの?」
「俺だって昼休みくらいあるよ」
丸椅子をベッドの縁に寄せ、腰を下ろす。
「今日の献立はなんだ〜?」
トレーを覗き込んでみると、茶碗蒸しと小さいおむすびに味噌汁、それにフルーツの盛り合わせ。
「美味しそうだな」
「……」
「冷めるぞ?」
「うん…」
「………。ほら、永菜の好きなかまぼこが入ってる」
茶碗蒸しにスプーンを入れ、すくって見せてやるが…食べる気ではないらしい。
「うん、美味しい!」
「ちょっと、それ永菜のだから!」
「なんだ、食べるの?」
「食べるよ!?」
そう言うのでスプーンを渡すと、軽くかき混ぜて口の中へ。
「ほんとだ…美味しい、温かい」
ここの病院食はなかなか美味しいと思う。