「お疲れ様でした、点滴終わりましたよ」



ふと目を開けると、看護師が苦笑している。



洗面器を握ったまま、壁に体を預けて眠ってしまったようだ。



「大丈夫ですか?もしかして、吐きました?」


「いや?」


「そうですか?ちょっと待っててください」


「………うん?」




看護師がパタパタと奥に消えていくと、その直後蒼先生が顔を覗かせた。



「どう?」


「はい、さっきよりは」


「もし厳しいようなら朝来て」


「わかりました」


「…てか、帰れる?」


「はい、大丈夫です」




返事を聞くと、蒼先生は右手を差し出した。


「回収。吐いたの?まさか」


「はは…、まさか」


この否定は嘘ではない…よな。


「……」


蒼先生の苦笑が視界に入ったような気がするが…気のせいだ。


「ありがとうございました」