「…ッゲホゲホ…、ゲホゲホッ…」
孤独な診察室に響く嫌な咳。
目を開けると、白い天井が広がっている。
少し眠れた…。
だが、頭を少し動かしただけでズキンと酷い痛みがあった。
「ッゲホゲホ…ッ…ハァ…」
頭上の点滴をパッと確認した。
あと10分くらいだろうか。
よりによって今夜の救急外来に蒼先生がいるだなんて…。
仕組まれたような偶然に笑えてくる。
今夜眠ろうと思ったら、止まらない咳と耐えきれない頭痛で死にかけた。
水分を取ることも不可能で、普段の感覚から自分の体が悲鳴をあげていることは察しがついた。
そうして結局、タクシーを呼んだのだ。
自力で病院に来たのはいいが、タクシー内から今までの記憶は薄い。
診察は終わっているのかどうかも定かではなかった。
「ッゲホゲホ…ッ」
昼から感じていた胸の違和感も、強くなっているような気がしていて…。