「おーい」
徐々に左へ傾く上半身。
「そっち移ったら?」
重たそうに腰を上げると、倒れ込むようにベッドへ。
息苦しそうな呼吸に、唸る声。
「もっと早く来るっていう考えはなかったのかよ」
「…動けなくて」
水分をろくにとっていないと聞いたが…、どこかの誰かじゃあるまいし。
「はい、後ろ」
ワイシャツの背中側から手を入れるの、大分やりづらいんだけど。
若干強引に服の中に手を入れ、丁寧に聴診。
医者のくせに受診が遅い。
あぁ、これが医者の不養生か。
「点滴終わったら帰宅。
ここ、離れるけどいいよね?」
「はぁい」
絶対聞いてないだろ…
と思ったが、この熱じゃそんなもんだ。