『連絡が取れない』
季蛍がそう言うので、電話を掛けてみたけれど。
二度の発信には応答なし、メッセージも見ていないようだ。
"気絶でもしてんじゃないの"
冗談のつもりだったが、まさかこんな状態だったとは。
「ふはッ…」
冷えピタとマスクに、グルグルと巻き付けられた厚手のブランケット。
弱り果てたその姿に、笑いを堪え切れなかった。
「急患対応頼まれて待合室覗いたらさぁ…」
"高島なんだもん"
バランスを崩した高島を背後から咄嗟に支えた港は、そう言って笑った。
「当直の先生、顔見知りで良かったね〜」
わざとらしい港の発言に、高島はマスク越しでもわかるように苦笑した。
「ほら、真っ直ぐ歩いてよ」
支えてもらったのをいいことに、港にほぼ体重を掛けている。
「おーもーい」
若干押されながらも椅子に腰を下ろした高島は、同時に顔を歪めた。
「じゃ、あとは任せた」
「はいはい…、付き添いお疲れ」