「ただいまー」


玄関の中に入ると、室内から暖められた空気が流れ込んできた。


「ぱぁぱ、おかえり!」



勢いよく走ってきた夏来を抱きとめると、胸の中で咳き込んだ。


「お、大丈夫か?」


背中をさすってやると、落ち着いたのか顔が上がる。


「だいじょうぶ!」


「そうか?」


「お絵かきしよ!はやく!」


そう言って飛び跳ねる夏来は、服を強引にひっぱった。


「分かった、その前にパパとぎゅーしよ?」


再度嬉しそうに飛び跳ねながら胸の中に収まる夏来をそっと抱くと、慌ただしい鼓動が伝わってくる。




…やっぱりな。




「夏来、お薬吸った?」


「ごはん食べたあと、ままが吸ってって!」


「言ったの?」


「言った!」


「そうか、ちゃんとできた?」


「できた!」


「えらいな〜」


「そうでしょ?だからあそぼ!」


「分かったよ、ちょっと待って」




促されるまま部屋の中に入ると、ソファには毛布にくるまった季蛍が。


「おかえり、高島先生どうだった?」


「あぁ…、長引きそうな風邪だよ」


「そっか、大丈夫かな」


「少し休んでもらいたいね」


「高島先生は当直引き受けすぎだと思う」


「はは…、確かに」




「パパー」


「今行く!…夏来に吸入させた?」


「うん…、昨日の天気不安定だったでしょ?」


「心配してたのが的中したな」


「早く寝ようって言ってるのに蒼待ってたの」


「ふふ…、少し許して」


「うん、いいけど」